尖晶石ことスピネルは、特に赤いものがルビーとよく似ていたため、コランダムグループの鉱物と間違われることが多かった石だ。
その効果にしても、やはりルビーやサファイアなどと似たところもあるが、深い部分では異なってもいる。
ある意味では、ルビー・サファイアより強力―――尖晶石の名の通り、ちょっと尖ったところのあるパワーストーンだ。
スピネルがもたらす強烈な個性の表現
あなたはどんな色のスピネルがお好きだろう。
燃えるような情熱と恋を求める方なら赤いスピネル。冷静かつ高い精神性を追求しておられる方なら青いスピネル。女性的な美しさや幸せを求めるならピンクのスピネル―――というふうに、自身の望みや個性に合った色のスピネルと惹かれ合うのではないだろうか。
スピネルはそれを所持した途端、持ち主の望みや個性を極めて強いレベルで増幅させる。
かなり強引なパワーで、あなたをあなたがなりたいと望むキャラクターへと変化させ、その姿やオーラを周囲に対し猛烈にアピールする。
心理的にも行動的にも積極性が増し、様々なことに果敢に挑戦し、数々の成功を収める。
肉体的にも精神的にもエネルギーレベルは大いに高まる。毎日活発に動いて、夜は短い時間の熟睡で疲労を残さず回復する。
またスピネルの持ち主は、自分自身の持ち物、お金、能力、立場やそれに付帯する力などを行使することにためらいがなくなる。
周囲の批判を怖れず(というか、意にも介さず)使えるものは何でも使い、目的を達成しようとする。
その有り様はある意味、暴走的でわがままだ。
スピネルは極めて個人主義的な石だ。
非常に優秀な個人プレイヤーとして多くの偉業を達成する一方、周囲との協調性には欠けるところがある。
むろんスピネルの持ち主には、他者に対する悪意などない。
超絶マイペース(他人の何倍もの速度で、何倍もの仕事を平然とこなす、という類いのマイペース)なので、他者のことが気にならないだけだ。
そんな有り様は、多くの人から尊敬と憧憬を獲得できるだろうが、同時に嫉妬や悪意を招いてしまうこともあり得る。
スピネルの主自身に悪意はなくても、実際誰かを傷つけたり、迷惑をかけたりしてしまうこともあるかも知れない。
また退屈をきらうスピネルの奔放さと享楽性は、人生にドラマチックな展開をもたらす。
思いもよらない幸運に巡り会える一方、やはり思いもよらない障害やトラブルに巻き込まれることもある。
むろんスピネルからすれば、そんな障害やトラブルは攻略すべきゲームに過ぎないので、怖れる必要はないのだが、持ち主にとってはちょっとしんどいかも知れない。
そのような部分で、注意すべき石ではある。
驚嘆すべきブラックスピネルのパワー
スピネルの中で最も独特で、力強く、それ故に人気なのがブラックスピネルだ。
カットを施したブラックスピネルの美しさは「ブラックダイヤに匹敵する」とされ、そのエネルギーレベルもダイヤモンドに近いものがある。
ブラックスピネルを身につけた人は、ただそれだけで「王」の風格を身に纏う。男性でも、女性でもだ。
黒色の石なので、持ち主のオーラは落ち着いた渋いものになるが、その内には猛烈なエネルギーが存在している。
命令ひとつで、周囲に恩恵を、あるいは災厄をもたらし得る「王」の力だ。
ゆえに、周囲に苦しみをもたらす「暴君」にならぬよう、持ち主は心すべきだともいえるが、案外その心配は少ないようである。
ブラックスピネルは王の風格を得ると同時に、王としての美意識も身につける。
自分本位で他者に興味を持たないスピネルの特性は変わらないが、あくまで個人的な美意識として、周囲に対し公明正大であらんとするのだ。
いわゆるノブレスオブリージュ―――高貴なる者の義務―――として、周囲に益するような行動も取るようになる。
また黒い物質というものは、あらゆる色彩の光を吸収した結果、黒い色彩を持つようになったもの。
ブラックスピネルの主も、良くも悪くもさまざまな「人」「物」「事」を懐深く受け入れ「清濁併せのむ」度量のようなものを―――やはり本人の美意識により―――身につけるようになる。
社会的に、ブラックスピネルの持ち主がどんな存在になるかというと、ちょっと想像するのが難しいところがある。
王の風格・資質は持つが、やはり本質的には個人主義であり、集団のリーダーになることは本人自身が望まないのだ。
芸能、芸術、個人スポーツなどの世界でスーパースターとなるかも知れない。
ごく小さなほぼ個人経営の会社で猛烈な業績を上げ、カリスマ経営者として有名になるかも知れない。
会社勤めをしているとすれば、そのとてつもないエネルギーと能力で、誰からも頼られるエリート社員となるだろう。
しかしその結果としてなんらかの部署のリーダーにされてしまうと、個人主義な本人にとっては不本意な状況となってしまうかも知れない(その職務を、ブラックスピネルの主は十二分にこなすだろうが…)。
もし様々な実務をすべてこなしてくれる、優秀な副リーダー的人物と巡り会えた場合、そのカリスマ性を担がれ気付かぬ間に象徴的リーダーにされる、という展開もあり得る。
自分は好き勝手に生きているだけなのに、自分の周囲に自然と人が集まり、副リーダーの采配によりいつのまにやら優れた集団を形成している―――というパターンだ。
ともあれ、極めて希有で優秀な人物として、広く世の中から目されることとなるだろう。